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第68回 国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール

- 第68回(2021年度) 入賞者発表 -

外務大臣賞

愛知県立中村高等学校 髙須 椛梨 さん

日本における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、私たちが国連とできること -「いただきます」,「ごちそうさまでした」を世界共通語に-

法務大臣賞

東京高等学校 廣瀬 日乃 さん

もし私が世界の問題を一つだけ解決できる立場にあったら、何を達成し、どのような世界にしたいか - 世界平和のための未熟な提案 -

文部科学大臣賞

岩手県立花巻北高等学校 齊藤 鈴 さん

日本における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、私たちが国連とできること - 陸の豊かさを守るために -

公益財団法人 日本国際連合協会会長賞

九州文化学園高等学校 井本 志帆 さん

日本や日本人は、国連を始めとする多国間主義の外交を通じて、どのようにリーダーシップを発揮できるか-

全国人権擁護委員連合会会長賞

高水高等学校 吉野 悠太 さん

もし私が世界の問題を一つだけ解決できる立場にあったら、何を達成し、どのような世界にしたいか

公益社団法人日本ユネスコ協会連盟会長賞

宮崎県立宮崎南高等学校 酒井 彩花 さん

もし私が世界の問題を一つだけ解決できる立場にあったら、何を達成し、どのような世界にしたいか - 子どもの飢餓ゼロのために私ができること -

日本ユネスコ国内委員会会長賞

松江南高等学校 石倉 要 さん

日本における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、私たちが国連とできること - 身近な問題を解決し、SDGsを達成しよう! -

公益財団法人安達峰一郎記念財団理事長賞

第一学院高等学校 養父校 畑 すみれ さん

もし私が世界の問題を一つだけ解決できる立場にあったら、何を達成し、どのような世界にしたいか

NHK会長賞

佐賀県立佐賀西高等学校 真﨑 雄大 さん

もし私が世界の問題を一つだけ解決できる立場にあったら、何を達成し、どのような世界にしたいか - 3Dプリンタで目指す健康 -

国際連合広報センター賞

日本大学豊山高等学校 池田 直樹 さん

日本における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、私たちが国連とできること - お菓子から始めるSDGs -

- 特賞入賞作品紹介 -

日本における持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けて、私たちが国連とできること - 「いただきます」,「ごちそうさまでした」を世界共通語に -

外務大臣賞
愛知県 愛知県立中村高等学校 2年 髙須 椛梨

我が国では、食事をする際に必ずする行為があります。それは、手と手を合わせて、食前に「いただきます」、食後に「ごちそうさまでした」と言葉を発することです。私たちはこの一連の動作を当然のように行っていますが、これは、食材を作ってくれた生産者の方々、食材を料理へと進化させた調理人、そして、なによりその生命をいただくための感謝の気持ちが込められています。この「いただきます」、「ごちそうさまでした」という食卓での作法だけでなく、その行動の裏に秘められた様々なお礼の気持ちまでをも含んで世界に広げることができれば、将来的に食品ロスの削減に繋げることができると考えています。

なぜ私がこの文化を世界へ広げようと思ったのか、そのきっかけは私の趣味のドラマ・映画鑑賞にあります。私は空いた時間に、海外ドラマをよく観ています。どのドラマにもほぼ必ず食事シーンはでてきますが、日本の「いただきます」や「ごちそうさまでした」に相当するような言葉を発するシーンはあまり見かけないことに、気づきました。まれに出てきたとしても字幕で「祈りの言葉」と表示されるだけなので、日本の「いただきます文化」とは随分ニュアンスが違うように思われます。

そこで、この素晴らしい日本独自である挨拶の文化を、世界にも広げられたらと考えるようになりました。では、その方法として海外において影響力のあるアニメや映画等で、あえて翻訳せずに、”itadakimasu”として使用することが重要なのではないでしょうか。

日本には、海外に影響を与え続けているアニメ作品が数多くあり、それらは我が国と世界中とを効果的に繋ぐ架け橋となります。過去に数多くの海外の方々が日本のアニメのセリフを言っていたのをテレビで見たことがあります。それらのセリフは全て日本語のままで、使い方も正しかったため、それと同じように”itadakimasu”も後々は世界規模での食品ロスの削減に繋がると私は考えます。

また近年、日本を含む先進国の国々では、料理の写真を撮りSNSで共有した後、食べないまま捨てる行為や、大食いや早食いなどの「無理して食事をする」行為がテレビの企画で繰り返され続けており問題視されています。過去に、あるニュースでゴミ箱に捨てられる大量のアイスクリームの映像を見て胸を締め付けられるような衝撃を受けたのを今でも覚えています。飢餓に苦しむ人がそれを目にしたらどう思うのでしょうか。

写真映えやエンタメ的な面白さを重視し結局食べずに捨てる、そのような価値観の変化は直すべきだと私は考えています。小学校では、給食を残してはいけないと教わってきました。その頃は好き嫌いを無くすためだろう、くらいにしか思っていませんでした。しかし、高校生となり昼食用の弁当を自ら毎日用意する立場となった現在、十分な食事にありつけることへのありがたさや、その過程で様々な形で携わってくれた人々への感謝の気持ちが芽生えるようになりました。そのことがきっかけで、食品ロスや飢餓について学び、重要さに気づきました。

上記のように、「いただきます」「ごちそうさまでした」を世界の人々に知ってもらうこと、そして「食べ物に関する食育の見通し」が食品ロスの削減に繋がる私たちができる国連との目標に向けた第一歩だと考えています。

現在、年間で約13億トンもの食べられる食材がこの地球上で廃棄されており、うち612万トンが日本で廃棄されています。年間これだけの量の廃棄される、本来ならば食べることのできる食材があれば、たくさんの救うことのできる命があります。また、「腹が減っては戦ができぬ」ということわざがあるように、物事に取り組むときはまずエネルギーが必要になります。

様々な地球上の環境問題を解決していくスタートラインに立つ前に、まず地球上から食品ロスを削減し、食料問題を解決することが重要ではないでしょうか。そして、世界中の人々が毎日笑顔で「いただきます」、「ごちそうさまでした」が言える世界を目指していきます。

もし私が世界の問題を一つだけ解決できる立場にあったら、何を達成し、どのような世界にしたいか - 世界平和のための未熟な提案 -

法務大臣賞
東京都 東京高等学校 2年 廣瀬 日乃

もし私が世界の問題を一つだけ解決できる立場にあったら・・・。私は、紛争問題解決を達成し、世界中の人々が憎しみを抱かずに平和に暮らすことのできる世界を実現したいです。

ある日、シリアのアレッポを写した美しい写真を目にしました。歴史的な構造物が数多く残る古代都市として、ユネスコ世界遺産に登録されているアレッポ。しかし、長期にわたる紛争によりほとんどの構造物が壊滅し、かつての美しい街並みはもう見られません。シリア人権監視団によると、シリア紛争の死者は2020年末時点で38万人を超えたそうです。さらには、世界中で約8240万人が紛争などにより故郷を追われ(2020年末時点)、児童の就学をも阻害していることがUNHCRの発表から分かります。紛争は沢山の人の命を奪い、故郷を奪い、教育機会を奪います。したがって、世界中の人々が平和に、幸せに暮らすためには、紛争問題の解決が必要不可欠であると考えます。

紛争の原因は地域によってさまざまですが、多くの紛争の火種が何かしらの「対立」であることは間違いないでしょう。では、対立とは何が原因で起こるのでしょうか。私は、対立は「違い」によって起こると考えます。考えの違い、宗教の違い、民族の違い・・・。そして、それらを利用して自らの目標を達成しようとする人々の存在もあります。「違い」を排除するために人々は傷つけ合い、その過程でお互いに家族を失い、友を失い、憎しみを募らせていく。報復は更なる憎しみを呼び、負の連鎖に陥る。このように、武力による争い・報復は憎しみを生み、新たな悲劇へと繋がるのみです。仮に武力によってのみで一時的な和平が実現されたとしても、お互いへの憎しみは燻り続け、少しのきっかけで対立は蘇ってしまうでしょう。では、どうすれば良いのでしょうか。私は、「対話」でのみ本当の和平は実現されると考えます。お互いの仲間を傷つけ合った敵同士が対話をするというのは、勇気が必要なことです。ですが、私はこの勇気こそが真の平和への切符であると主張します。対話をすることにより、過去の過ちを赦し合い、互いの違いを尊重することでこそ、現在の対立を根絶させ、未来の対立を予防することができると思うためです。

しかしながら、現実はそう上手くいきません。紛争はお互いにとっての正義のぶつかり合いであり、過ちだとすぐに認めるのは簡単ではないためです。お互いの行為を赦し合うことにも時間がかかるでしょう。そのため私は、対立している人々が「共通の課題」解決を軸に対話することのできる枠組み作りを提案します。食糧不足、災害、テロリズム、感染症などの「共通の課題」はどの地域にも存在し、仲間の生存に関わる課題は緊急を要します。したがって、これらを解決するための取り組みのための話し合いや連携は、対立の程度にも左右されると思いますが、敵同士であっても通常時よりスムーズに進むと考えられます。そして、この話し合いは対話を生み、調和を生む可能性を秘めています。この提案は克服すべき点がいくつもあるでしょう。しかし、この提案が実を熟し、分かり合えないと思っていた者同士が共通の課題を共に乗り越えられた時、両者の間には絆が芽生え、共存の道が開かれるのではないでしょうか。

「私たちの世界はCOVID-19という、共通の敵と対峙しています。このウイルスには、国籍も民族性も、党派も宗派も関係ありません。すべての人を容赦なく攻撃します。その一方で、全世界では激しい紛争が続いています。(中略)COVID-19対策で歩調を合わせられるよう、敵対する当事者間でゆっくりとでき上がりつつある連合や対話から、着想を得ようではありませんか。(後略)」

アントニオ・グテーレス国連事務総長の言葉です。国際連合は、中立の立場から紛争当事者に対して「対話」を促し、平和を構築することのできる唯一無二の国際機関です。対話を持続させるために「共通の課題」解決というテーマを取り入れることができれば、課題も、人々の対立も少しずつ解消され、紛争問題の根本的解決が達成される日が近づくのではないかと、私は考えるのです。

深刻な課題が発生したら、逆にそれを利用して、世界の絆を深めようではありませんか。国際協力という名の、確固たる団結の力で。

日本における持続可能な開発目標 (SDGs)の達成に向けて、私たちが国連とできること - 陸の豊かさを守るために -

文部科学大臣賞
岩手県 岩手県立花巻北高等学校 2年 齊藤 鈴

私の家では牛を飼育しています。みなさんの食卓に並ぶ肉の生産者です。そのような環境で育った私は、以前、ある新聞記事を目にしたとき、悲しさと同時に違和感を覚えました。その記事には、「家畜が原因で森林減少や生物多様性の崩壊が進んでいる。」と書かれてありました。

この現状を知った時、私は一つの疑念が湧きました。皆さんは肉を食べますよね。その肉は人間が食べるために育てられている家畜なのに、森林減少などの様々な問題を都合のいいように家畜に押しつけ、人間は責任逃れをしているように感じてなりませんでした。
しかし、実際に家畜の飼育によって森林減少を引き起こしているのは紛れもない事実です。例えば、アマゾンでの森林破壊の90%以上の原因が畜産であり、毎秒サッカーグラウンド1つ分の熱帯雨林が、畜産のために伐採されているという事実もあります。では、家畜が原因とされる森林減少が進む今、国連と私たちにできる点はどこにあるでしょうか。

確かに、先進国の食糧事情が森林を蝕んでいるという視点もあります。しかし、私は肉牛の生産者という立場からこの問題点を切り開いてみました。森林減少を進行させている原因の一つに家畜の排せつ物の管理不足による土壌汚染や水質汚染があげられます。家畜の排せつ物の放置により地下水の水質汚染が起こり広範囲に悪影響を及ぼしている事実をご存じでしょうか。

そこで、家畜の排せつ物の管理状況や処理方法について調査したところ、日本では海外に比べ利用価値の高いバイオマス資源として農地に戻すなど多様な処理方法があり、農地に還元されていることも多い一方で、世界では野積みといった単に積み上げて放置されている状況が見受けられます。このような不適切な管理こそが環境破壊の原因でもあるのです。そのほとんどが開発途上国なのですが、一概に責めることはできません。

なぜなら、彼らには充分な知識が無い上に先進国からの過剰と言える肉牛の生産を強いられているからです。したがって、彼ら途上国への望ましい農業の教育が必要だと考えました。

一方で、皆さんは、アグロフォレストリーといった言葉を知っているでしょうか。アグロフォレストリーとは、樹木を育てながらその樹間で農作物や家畜の飼育を行う農林業のことを言います。私はこれが理想とする農業と森林そして野生動物を守るふさわしい取り組みだと考えています。森の資源は枯渇されつつあります。アグロフォレストリーでは、それを回復させることができるほか、経済発展にも繋がります。また、先に挙げた家畜の排せつ物が落ち葉など有機物の供給によって土壌改良を促し、樹木の成長も促すため、森が守られ生態系も守ることが可能になります。

私は、偶然、このアグロフォレストリーを知ることができましたが、この取組みは世界ではまだあまり普及していないのが実情です。私はまずはこの危機感、そしてこの取り組みを多くの人が知ることが重要だと考えます。グレタ・トゥーンベリさんの国連での涙の演説はみなさんも既に知っているかもしれませんが、16歳の彼女の演説は誰にとっても印象深かったと思います。今私たちが為すべきこと。それは、これらの問題を自分のこととして学び、しっかりと受け止め、彼女のように私たち子供達も未来のために訴えていくことだと考えます。私が住む地方には「言霊」という文化が残っていて、よく祖母が「言葉を唱え続けるとその言葉には魂が宿る」と言っていました。今こうやって私たちのように声を上げ、そしてその声はきっと「言霊」となって、人を、地球を変えていけると私は信じています。

今、世界中では新型コロナウィルスが原因で私たちの生活が脅かされています。しかし、食肉のために自然をむしばんでいる人間の行為は、コロナウィルスと何ら変わりがないといっても過言ではないと思います。今、国連と私たちにできること。それは、途上国の農業教育の充実と私たち子どもたちが世界に目を向け、学ぶことにあると考えます。森林は私たちの生活にとって必要不可欠な大切な資源です。農業もまた私たちの生活を支えています。世界の多くの人がこのことを少しでも意識した行動をすることで自然は守られます。皆さんの行動で明るい未来をつくりませんか。森の豊かな恵みを未来に繋ぐために。

日本や日本人は、国連を始めとする多国間主義の外交を通じて、どのようにリーダーシップを発揮できるか

公益財団法人日本国際連合協会会長賞
長崎県 九州文化学園高等学校 3年 井本 志帆

今年の八月六日。山道のカーブで揺れる車の中、私の手にはランタンが握られていました。そのランタンの中には小さな炎が揺れています。この炎は、七十六年前、十四万人もの命を奪った火そのものです。そうです、広島に投下された原爆の残り火なのです。私はこの火を平和学習のために私の通う学校へ運びました。

この火との出会いは昨年の夏のことです。以前から私は、なぜ日本人は原爆を落とされたのにアメリカを憎んでいないのか、という疑問があり調べてみることにしました。その過程で、福岡県星野村の平和の塔で灯し続けられている原爆の残り火の存在を知り、現地に向かいました。この火は、星野村の山本達雄さんが、広島から原爆の残り火を持ち帰られたものです。山本さん自身も列車の中で原爆に遭い、同時に親戚の方を亡くされました。原爆の威力は凄まじく、親戚の遺骨は見つかりませんでした。山本さんは、遺骨の代わりにと焼け跡にくすぶっている火を懐炉に移し、星野村まで持って帰って来られました。この火が今も消えることなく灯し続けられ、今は。平和の火。と呼ばれています。

私は文字通り、平和を願って灯されていると思っていたのですが、この火は親戚の命を奪った。“恨みの火“だったのです。原爆投下直後、山本さんは、焼け焦げた死体や全身やけどで助けを求めてくる人々を踏み越えながら親戚を探したそうです。この体験から山本さんは、アメリカへの憎悪で頭の中がいっぱいになり、持ち帰ったこの火でいつかアメリカを焼き払ってやるとも考えていたそうです。やはり戦争は、このようにいつまで経っても心に深い傷を残すことを知り、決してくり返してはならないものだと強く感じました。

私はこの火のことを多くの人に知らせたいと考え、学校で行われる平和学習の時に全校生徒のみんなに見てもらおうと思い立ちました。それから学校側と平和学習の期日や内容を検討し、八女市役所に火を採らせていただく申請を行いました。結果、八月六日の星野村の平和祈念式典後に採火できることとなり、翌日の平和学習が実現しました。冒頭の話は、星野村から火を持ち帰る際の様子です。この火を全校生徒の前で展示したところ、“原爆という者を実感できた”、“この火が憎悪の火であったことに驚いた”等の感想も聞かれ原爆と平和について例年とは違う形で考えることができました。

今年一月、国連の核兵器禁止条約が発効しました。世界が核兵器廃絶へ明確な一歩を踏み出したのです。しかし、現在のところ日本は批准していません。もちろんこれには、日本の国としての様々な状況が影響していることはわかっています。このことについて私は、外務大臣の経験もある国会議員に手紙で尋ねてみました。何度がやり取りをする中で、“日本のプレゼンスも次第に高まっていて、いずれは日本も批准しリーダーシップを発揮する時がくる”という言葉があり、期待に胸が膨らみました。

しかし、核兵器廃絶や平和の実現に向けてリーダーシップを発揮するのは、政治家だけではありません。私たちにもできることがあります。私が今回、原爆の残り火で原爆を実感できたように、一人ひとりが様々な行動をすることによって原爆のことを知り、我々は唯一の被爆国の国民である、という自覚と意志を持つことです。その自覚と意志をもって、国際交流や留学、SNS等の場での発信こそが、私たちの発揮できるリーダーシップです。

昨年の国連創設七十五周年記念宣言の中で「多国間主義は選択肢ではなく、必要不可欠なものである」とされました。共通の決まりや考えの中で意志決定を行い、協調して行動するという多国間主義の中で、核兵器の悲惨さを最も知っている国民の声として明確に表明することができれば、核兵器廃絶そして真の平和へ向けて世界を力強くけん引することができると、私は信じます。

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