第56回 国際理解・国際協力のための全国中学生作文コンテスト 入賞作品紹介

受賞者/題目
外務大臣賞 山形大学附属中学校 長澤パティ 明寿 さん
昨年3月には,仙台において,第3回国連防災世界会議が開催された。日本と国際社会は,今後,どのように防災に取り組むべきか。
文部科学大臣賞 名古屋大学教育学部附属中学校 大友 志穂 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
公益社団法人
日本ユネスコ協会連盟会長賞
青山中学校 名和 由佳子 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
公益財団法人
日本国際連合協会会長賞
さいたま市立大原中学校 礒上 潤奈 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。-誰もが学べる世界を-
公益財団法人
安達峰一郎記念財団賞
福島大学附属中学校 高橋 成碩 さん
今年,加盟国最多の11回目の安保理非常任理事国となった日本は,どのような取組を行うことで,世界の平和と安全に貢献すべきか。
日本放送協会会長賞 群馬大学教育学部附属中学校 吉川 暁大 さん
昨年3月には,仙台において,第3回国連防災世界会議が開催された。日本と国際社会は,今後,どのように防災に取り組むべきか。
国際連合広報センター賞 西大和学園中等部 藤井 あみ さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
金賞 いわき市立中央台南中学校 菊地 遥 さん
今年,加盟国最多の11回目の安保理非常任理事国となった日本は,どのような取組を行うことで,世界の平和と安全に貢献すべきか。
南砺市立井口中学校 上田 倫弘 さん
昨年3月には,仙台において,第3回国連防災世界会議が開催された。日本と国際社会は,今後,どのように防災に取り組むべきか。
広島女学院中学校 庭田 杏珠 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
銀賞 屋代高等学校附属中学校 小山 紘輝 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
AICJ中学校 保田 喜央 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
白百合学園中学校 高村 理紗子 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
佳作 山口大学教育学部附属山口中学校 安田 早希 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
聖母被昇天学院中学校 上田 裕佳さん さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
洗足学園中学校 齋藤 向日葵 さん
昨年3月には,仙台において,第3回国連防災世界会議が開催された。日本と国際社会は,今後,どのように防災に取り組むべきか。
北海道教育大学附属札幌中学校 谷内 佑理衣 さん
国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
相生市立双葉中学校 西村 公介 さん
今年,加盟国最多の11回目の安保理非常任理事国となった日本は,どのような取組を行うことで,世界の平和と安全に貢献すべきか。

昨年3月には,仙台において,第3回国連防災世界会議が開催された。
日本と国際社会は,今後,どのように防災に取り組むべきか。

外務大臣賞
山形県 山形大学附属中学校 3年 長澤パティ 明寿

二千十六年三月十八日。国連防災世界会議が私達の住む東北で閉幕を迎えた。この会議で発表された『仙台防災枠組』。国際社会が取るべき労災リスクの理解・災害リスク管理のための災害ガバナンス・強靱化に向けた防災への投資・効果的な応急対応にむけた準備の強化とより良い復興という四つの柱が掲げられた。

その会議の約一年前である二千十五年四月二十五日、私の父の母国であるネパールをマグニチュード七・九の大地震が襲った。連日テレビに映し出される悲惨な光景。ちょうどその一ヶ月前にネパールを訪問していた私にとって大きな衝撃だった。それと同時に自分がネパールのために何かできることはないかと考え始めた。そして私にはある一つの思いが芽生えた。

「ネパールに行って現状を知り活動したい」

私が世界について考える時、必ず思うことがある。それはこれからの社会・世界を担っていく私達にとって今の世界の現状や課題を知り、学び考えていくことは未来に向けてとても大切な事であるということだ。将来、世界のために率先して活動していくために今から様々な体験や学びを通し考えていくことは欠かせない。

そして地震から約三ヶ月後の夏休み、私はネパールの地に降り立った。空港を出るとすぐにバラバラに崩れた世界遺産の寺院が目に入った。そして、特に被害の大きかった山村地域に入り、小学校や住民の家を訪れボランティア活動をした。

このネパール訪問を通して世界の力は大きいということを私は改めて感じた。地震の直後、世界各国がネパールに救助隊を派遣した。それにより多くの命が救われたと共に、仮設テントや学校が建てられた。ネパールの人々もその支援に対して本当にありがたいと語っていた。一方、九千人もの死者を出したこの震災で、もっと死者や被害をおさえることができたのではないかと私は思う。ネパールでは震災時、国中がパニックに陥り何をすべきかわからない状況になった。日頃から災害への知識を持ち、備えをしっかりとしていれば改善できた事がもっとあったのではないだろうか。自然災害を防ぐことは私達人間には難しい。しかしその被害を最小限に食い止め対策を取れば立ち直る事はできる。その為にも先の会議で発表された『仙台防災枠組』や災害、防災に対する知識を日頃から深めていくことが国際社会の中で大切になってくると思う。特にネパールのような発展途上国と言われている国々ではそういった知識が少ない。例えば日本ではどこの学校でも行われている避難訓練。私達にとっては当然のことだがネパールでは行われていないと聞いた。私は避難訓練のような小さな防災訓練の積み重ねや防災パンフレットによる教育が被害を最小限にできる大切なカギであると考える。又、これらの活動を国連という世界の心臓のような大きな組織がその力を活かしてバックアップしていくべきであろう。

日本は地震や火山の噴火、台風等災害を幾度となく経験している国だ。そんな日本だからこそ世界の防災対策をリードし、サポートしていくことができる立場にあると思う。日本は防災のための備えや技術を世界へ発信していくことが必要であると私は考える。

日本と国連が世界の防災を索引していくこと。それが安心して暮らせる世界を築く一歩になるだろう。

国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,
国連を通じてどのような役割を果たすべきか。

文部科学大臣賞
愛知県 名古屋大学教育学部附属中学校 3年 大友 志穂

世界全体のマグニチュード6以上の地震の5分の1が発生している国がある。私たちが住む、この日本である。地震だけではない。日本は、活火山数でも世界の7パーセント、自然災害の被害額でも5分の1を占めている。「災害大国」である日本が国連を通じて世界に貢献できることは何か。私は、防災協力だと思う。

日本はこれまで、数々の国の災害支援をしてきた。例えば、日本政府は30年以上にわたり、フィリピンのパッシグ・マリキナ側の洪水対策を行い、被害の拡大防止に大きく貢献した。そして、2013年11月にフィリピンで台風ハイヤンが発生した際、日本は国際緊急援助隊を派遣し、住居や食料・水などの無償資金協力を行い、物資を供与した。それに加え、日本政府はフィリピン政府に対し、ハザードマップの作成や土地利用計画・強いまちづくりの計画立案を支援した。

なぜ、日本はこんなにも的確な支援ができるのだろうか。その理由は2つある。

一つ目は、日本の災害復興経験が豊富なことだ。日本は地形や地質などの自然的条件から見て、自然災害を非常に受けやすい国土となっているため、地震・台風など様々な災害を昔から経験し、その度に復興をし、災害対策を改善してきた実績がある。

二つ目は、産学官民の防災協力体制づくりが進んでいることである。例えば、「東海圏減災研究コンソーシアム」という組織は、東海圏の6大学が互いに連携し、減災の研究の協力をし、安心安全に暮らせる地域社会を目指している。この組織を中心に、「産」が広域的産業活動の課題解決を、「学」が防災・減災の研究成果の共有を、「官」が東海圏の連携体制の構築を、そして「民」が先進的取り組みの共有を、とそれぞれの立場から、産学官民で連携して災害対策を図っている。

このように、日本は災害が多いため、個人や民間企業、教育・研究機関、国が力を入れて、災害対策を進めてきた。日本のこの徹底した災害対策は、世界中の災害を受けている国や地域にとても役立つと思う。例えば、世界中の国々に、昨年3月の第3回国連防災会議で採択された「仙台防災枠組2015―2030」を参考にしたパンフレットを、国連を通じて配り、各国の政府や防災に取り組む人たちに参考にしてもらったらどうだろう。この枠組は、人命や暮らしだけでなく、企業やコミュニティ、国の経済的・物理的・社会的・文化的資産の被害リスクを減らす目的で採択され、日本の防災での取り組みの成果が活かされている。日本の経験が、国連を通し、他国に貢献できる機会といえるだろう。そして、希望国にはアドバイザーや技術者を日本から派遣して、実践に向けて支援する。こうすることによって相手の国も色々な対策の中から、自国に合うものを選ぶこともできるし、より効果的な防災計画を立てられるかもしれない。

また、去年の国連総会本会議で「世界津波の日」が制定された。この日に、各国の首脳会議を開き、そこで、シミュレーション解析結果を使い、津波を疑似体験してもらう、といのはどうだろう。世界中のすべての人に津波の恐ろしさを知ってもらいたいのだが、現実的に不可能なため、首脳らに見せる。そして、それを各国で国民に伝えてもらう、というものだ。多くの人が、あまり身近でない津波を知ることで、防災意識を高めることができると思う。内陸国や津波が発生しにくい国の首脳も体験することで、他国で津波の被害が出た際、的確な災害支援ができ、両国の関係向上や互いに防災協力ができる。

自然災害の発生が多くなっている今、様々な災害を経験している「災害大国」の日本が自らの復興経験を活かして、防災協力をして国際社会に貢献することが大切だと思う。

国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,
国連を通じてどのような役割を果たすべきか。
-誰もが学べる世界を-

公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟会長賞
岐阜県 青山中学校 2年 名和 由佳子

私は今一枚のカラフルなパンフレットを宝物のように大切にしている。それは持続可能な開発目的「SDGs」を紹介するパンフレットである。「SDGs」とは今を生きる私たちのことだけでなく、遠い未来を私たちの子孫たちも安心して幸せに暮らせる世界をつくるために、二〇三〇年までに達成する十七個の目標である。私は国連加盟六〇年を迎えた日本は、「SDGs」実現のためのリーダーとして特に教育の分野で活躍できるようになるといいと考えている。

私が初めてこのパンフレットに出会った時、「この目標が本当に実現できたらいいな」と何気なく思いながら、十七個のパネルを眺めていた。そして、その中の一枚のパネルに吸い寄せられた。そのパネルはワイン色で、そこには「目標四 質の高い教育」と書かれていた。これを見たとき、私はアフガニスタンの濃い青空の下で、きらきらと目を輝かせて勉強に取り組んでいる、私と同じ年ぐらいの少女の写真を思い出した。

アフガニスタンではもう二十年近く、国の中で戦争が続いている。そのせいで、アフガニスタンの学校には教科書もノートも無い、なんと校舎さえなく砂漠の中で地べたに座って、地面に字を書いて勉強する子もいる。さらに、女の子は勉強なんてしなくていいという大人がたくさんいて、女の子は学校に行かせてもらえないこともある。

それでもアフガニスタンの子ども達は、青空の下の校舎もなくただ小さな黒板が一つあるだけの学校に、笑顔いっぱいでやってくる。そして、先生の言う事を一つも聞きもらさないように、真剣に話を聞き一生懸命勉強している。アフガニスタンの子ども達は、学校へ行って勉強をすることで、文字や計算を覚えて、自分の夢をかなえるためだけではなく、家族や周りの人を助け、役に立てるようになりたいと思っているそうだ。勉強はアフガニスタンの人々全体にとって「未来へつながる希望」なんだと思った。そして、そんな彼らが安心して勉強できるように、校舎建設、先生の養成、教科書や文房具などの支援を行っているのが私たちの日本だった。

「SDGs」の十七個の目標はどれ一つとっても、二〇三〇年までに実現することは、とても難しい目標ばかりだと思う。国連の力だけでも、加盟国のリーダーの力だけでも、担当の役所の力だけでも、とてもではないが実現することは不可能だと思う。この目標を実現するためには、世界中でくらす何億人ものごく普通の人々の協力が必要だと思う。

つまり、世界中の人々が、自分なりに現在の世界をよりよくするためには何をしなければならないかを考え、そしてまた未来の地球や子孫に何を残していくかを考え、「SDGs」の実現に一人でも多くの人が協力してこそ、将来まで幸せに暮らせる地球となるのではないかと思う。

だからこそ、四つ目の目標「質の高い教育」の役割はそのほかの目標よりひときわ重要になってくると私は思う。国連を中心とした支援のおかげで勉強することができるようになった人々は、勉強を通して自分の夢をかなえるだけでなく、きっと現在の社会や未来について考え、一緒に「SDGs」の目標を達成するために協力して取り組む仲間になってくれると思うから。

国連加盟六〇年を迎えた日本は、世界各国からより一層国連での活躍を期待されるようになると思う。だからこそ私は、日本がこれまで培ってきた教育支援の実績を活かして、なにより世界各地での「質の高い教育」の実現のために活動し、持続可能な開発の目標達成のリーダーとなることが大切であると考えている。

国連加盟60周年を迎える日本は,今後,変わりゆく世界の中で,
国連を通じてどのような役割を果たすべきか。

公益財団法人 日本国際連合協会会長賞
埼玉県 さいたま市立大原中学校 3年 礒上 潤奈

「わぁ、なんて綺麗なの!?」。

美しい色が重なり合い、引き立て合い、織りなす美しい布、刺繍。一つ一つに込められた願い、伝統、文化・・・。そして、作り出すアイデンティティー。この布に私は魅せられた。これはメキシコの先住民族が作った。たくさんの手間をかけて作られた、布。私の宝物だ。小学校三年生のとき、訪れたメキシコ。そこで私は彼らの布の虜になってしまった。しかし、彼らのことを知れば知るほど置かれている状況は厳しいことを知った。未だに残る差別、貧困、受けられぬ教育、粗悪な生活環境・・・。あの美しい布に潜む過酷な現実。それはそう甘いものではなかった。

今夏、私は市の国際交流事業でニュージーランドを訪れた。そこはメキシコの状況とは大きく異なっていた。先住民族、マオリ。彼らといえば、ハカ。今ではラグビーのニュージーランド代表試合前にも踊られている。国歌もマオリ語版がある。マオリ族は今、ニュージーランドに、そして、世界に認められている。

「私、マオリ族なの。」

うれしそうに話した彼女。彼らはみな、マオリ族であることに誇りを持っているのだ。マオリ族の文化は尊重され、後世に受け継がれている。同じ先住民族という立場。何が彼らのとりまく状況を大きく変えているのだろう。 支援という言葉を聞いて、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。きっと、多くの日本人は「お金を寄付すること」と考えるだろう。今まで日本はたくさんの国に多額の寄付をしてきた。確かに支援には多くのお金が必要だ。しかし、今の日本に求められていることは「寄付」なのか。日本が国連を通じて果たすべき役割なのか。

私がしたい支援とはそれぞれの民族を尊重し、文化を使った支援だ。例えば、先住民族が織りなす美しい布を日本が主体となって価値を見い出し、国連を通じて世界に発信する。

「自分達が作っているものは世界的にも価値があるんだ。」

そう知ることで民族としての誇りを持って、また、彼ら自身の文化や伝統にも自信をもつことができる。世界にも知ってもらえる。自分達の文化を継承していこうとする。

先住民族に向けられる偏見の鋭い目。自分が先住民族であることを隠そうとする人も少なくないそうだ。

「あんなに綺麗な布を織ることができるのに。」

それを知ったとき、私は悔しかった。とても残念だった。もし、世界の人々が価値を認識したらどうだろう。世界に自分達が織った布のバッグや服などがあふれたら・・・。

その対価は織った先住民族の人々の生活向上につなげられる。また、置かれている状況を改善できる。自立を促し、彼らが持っている文化を生かして得られる定期的な収入。次世代に向けて切り拓かれる新たな道。たった一回だけの施しではない。未来へつなぐバトンなのだ。

戦後の日本は暗闇のどん底から這い上がってきた。資源のあまり無かった日本は原料を加工したり、付加価値をつけた。その発展は世界に認められ、今に至る。その経験は先住民族の自立支援に生かせると思う。

これは単なるお金を与えるものではない。日本の知恵や知識、技術を生かし、彼らの文化を世界に広め、物を創り出すのだ。

私は国連職員として二十年後、日本ならではの支援をしたい。あの日魅せられた美しい布。そして、その存在。文化を通じた支援は先住民族の生活を必ず良いものに変えていく。これからもその民族ならではの文化が自信をもって継承されることを願って・・・。私は大きな一歩を踏み出した。