第51回 国際理解・国際協力のための全国中学生作文コンテスト 入賞作品紹介
賞 | 受賞者/題目 |
外務大臣賞 |
福岡雙葉中学校 藤戸 玲亜さん 「もしも私が国連職員なら」 |
文部科学大臣賞 |
仙台市立上杉山中学校 高橋 綾香さん 「もしも私が国連職員なら」 |
公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟会長賞 |
立教女学院中学校 入澤 里桜さん 「もしも私が国連職員なら」 |
財団法人 日本国際連合協会会長賞 |
渋谷教育学園幕張中学校 関根 崚人さん 「世界の自然災害に対して国連と日本は何ができるか」 |
財団法人 安達峰一郎記念財団賞 |
福岡県立輝翔館中等教育学校 下坂 隆昭 さん 「世界の平和と安定のために国連がすべきこと」 |
日本放送協会会長賞 | 三好中学校 藤本 春佳さん 「世界の自然災害に対して国連と日本は何ができるか」 |
国際連合広報センター賞 | 奈良学園登美ヶ丘中学校 成宮 里美さん
「もしも私が国連職員なら」 |
金賞 | 福島大学附属中学校 齋藤 薫さん 「もしも私が国連職員なら」 |
東松山市立南中学校 留奥 元明さん 「もしも私が国連職員なら」 |
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淑徳SC中等部 長尾 光玲さん 「世界の自然災害に対して国連と日本は何ができるか」 |
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銀賞 | 大仙市立平和中学校 鈴木 理彩さん 「もしも私が国連職員なら」 |
大阪星光学院中学校 山田 直史さん 「もしも私が国連職員なら」 |
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AICJ中学校 米村 亮太さん 「世界の平和と安定のために国連がすべきこと」 |
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佳作 | 浦西中学校 新里 真大さん 「世界の平和と安定のために国連がすべきこと」 |
神戸国際中学校 上山 真愛さん 「世界の平和と安定のために国連がすべきこと」 |
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香川誠陵中学校 福田 菜月さん 「もしも私が国連職員なら」 |
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垂井町立北中学校 佐藤 聖菜さん 「もしも私が国連職員なら」 |
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北海道教育大学附属札幌中学校 大重 佑佳さん 「もしも私が国連職員なら」 |
「もしも私が国連職員なら」
外務大臣賞
福岡県 福岡雙葉中学校3年 藤戸玲亜
夏休みの間、戦争や平和に関する記事からスクラップを作るために、ある朝、新聞を開いた時、「子ども操り自爆攻撃」という文字が目に飛び込んできました。14歳の少年は自爆しなければ殺すと脅されていましたが、アフガニスタンの警備の兵士に駆け寄り、助けを求めたので、首都カブールの少年更生施設に保護されたという内容。以前から、子ども兵士の言葉は聞いたことがあっても、自分とほぼ同年令の子どもが、生まれた場所が違うだけで、週三回のペースで自爆犯として使われている事実を知り、身の毛がよだつ思いでした。
世界の紛争地帯で戦う子ども兵は30万人以上で、33の国で政府軍・ゲリラ軍の両方が18歳未満の子どもを兵士として使っています。 国際法では、子どもの徴兵を禁止する法律があっても守られていません。子どもが運よく助かって保護されたとしても、生々しい殺害の血を見たり、命の危険を伴った過去の恐ろしい出来事から、自分の心と向きあうのは、どれ程、辛く寂しい事かと想像すらおよびもつかないです。子ども兵士の心のケアは「どのようにされているのだろう」と気になりました。それで、その関連の情報を調べてみました。
「ウォルター・リード陸軍医療センター」のトーマス・グリーガー教授らのチームは、イラク帰還兵600人を調査して、時とともに心的外傷ストレス障害(PTSD)の発生率が高くなることを発見していました。戦争終了後も、フラッシュバックなどの精神不安に駆られ、現在もさまざまな慢性症状に悩まされているのです。それでは、子どもはさらにそれ以上です。「どうすれば、子ども兵士の心の深い傷は治せるのだろう。」と私は考えていました。
夏休みも終わりにさしかかった頃、学校による職業体験で保育園に行きました。絵本の読み聞かせを、保育士さんが始めた時のことです。喧騒状態にいた子どもたちが、急に平静さをとり戻し穏やかな表情になったのです。自分に向けて、ゆっくりやさしく語りかけられる言葉には、心の浄化作用や、愛を育む力があることに気付きました。子ども兵士たちは、子どもらしく生きる時間を、はく奪されてしまっているので、彼らの心の深い傷を治していけるのは、「これかもしれない。」と思ったのです。
もしも、私が国連職員なら、心的外傷ストレス障害に対応できる子ども心理の専門家たち(エキスパート)と、保護された子ども兵士たちの笑顔をとり戻すプログラムを作ります。子どもの性質に合わせ、アートセラピーや音楽療法、読書療法などを使いながら、必ずエキスパートたちが励ましの言葉をかけます。希望に満ちた明るく、やさしい言葉によって、たくさん心に元気を与えたいです。
アフガン戦争は終結していないのにもかかわらず、その国の人々が東日本大震災の日本に義援金を寄せてくださった事に感動しています。国境を越えて、支え合う行動する時に、私は「平和」を感じますが、究極は、人の命が大切にされる時だと思います。日本では被災者と呼ばれますが、英語ではサバイバーと呼ばれ“生存者”(生き残った者)を意味します。子ども兵士のサバイバーたちの命をこれから、どのように輝かせてあげられるかどうかが、同じ時代に生き残った私たちの果たすべき平和への行動のひとつになればと思います。
「もしも私が国連職員なら」
文部科学大臣賞
宮城県 仙台市立上杉山中学校 3年 高橋綾香
「世界は相互に依存し、共存しているのです。」
第八代国連難民高等弁務官、緒方貞子さんの言葉だ。様々な分野でグローバル化が進む中、私は将来、何ができるだろうか。
まず一つ目の提案は、世界各国の小学生によるサマースクールの開催だ。学校の夏休み期間を利用し、テニスやサッカーなどのスポーツ、美術、音楽などごとに、各国の小学生が集い、共に一つのテーマに取り組むというものだ。私は小学生の時、イギリスにマナーキッズテニス大使として派遣していただいた経験があり、スポーツが国や言葉の違いを越え、心と心を通わせることができると体感した。また日本・中国・韓国の交流事業に参加した時には、三ヶ国の小学生が協力して一冊の絵本を創作し、一つの物を共に作り上げる喜びを共有した。そこで、この構想を考えたのだ。たとえ国が違っていても、一緒に一つの物事に取り組むことによって、心の距離が縮まっていくのである。小学生の頃に色々な国のお友達を作ることは、その後のかけがえのない財産になると共に、寝食を共にすることで、他国の習慣や文化、考え方などに身近に触れることができる。小学生という設定は大人になってからよりも先入観などを持たずに、それらの違いを自然に受け入れることができるのではないかと考えたからである。このプロジェクトは、国連の重要な目的の一つである「各国の間に友好関係を作り上げること」にも寄与すると考える。
二つ目は、災害援助や自然災害の影響削減への取り組みだ。今年三月、私達は東日本大震災に見舞われた。震災では、建物が壊れ、電気も水道もガスも止まり、不安な思い、つらい思いもしたが、震災のわずか数日後に被災地入りした国連災害評価調整チームをはじめ、各国からの支援や救助隊の姿は、とても心強く、勇気づけられた。国連難民高等弁務官事務所では、停電が続いていた被災地のニーズに合わせ、当初予定していた支援物資から、太陽光発電によるランタンに変更し、国連世界食糧計画と連携して支援してくれた。
こうした臨機応変な対応や、国連の諸機関の専門性を生かしての連携した、チームとなっての支援は、私の胸に深く刻み込まれた。また、私は、被災地に暮らす外国人のために、避難所や被災自治体へ外国語が話せるスタッフを派遣したり、学校が被災し休校となっている生徒達に、外国語や外国の文化に触れる授業を企画したいと思う。
今回の震災の経験をただ悲しくつらいものとして心の奥にしまいこむのではなく、震災から得られた貴重な教訓を国際社会と共有し、自然災害発生時の支援方法や、減災の仕方に生かしていけたらと考えている。
三つ目は、環境保護やエネルギーについての国際協力の推進だ。私は小学生の時から、アントシアニンー植物性色素に関する自由研究を続けており、この夏、この色素を利用し、光合成型太陽電池を製作した。通常、廃棄物となってしまう果物の皮を利用して色素を抽出するので、ゴミの削減、ひいては地球温暖化の防止にもつながる一つのアイデアと考える。たとえば、このような環境に優しい電池を改良・実用化する専門知識や技術を持つ国、晴天が多い気候で広い国土を持つ国、そのそれぞれが自国の持つ特長を生かして協力し合い、「次世代の生活を損なうことなく、国や人々の生活の向上を可能にする」クリーンエネルギーを創り出すのである。電池を設置した国では、技術者の育成や雇用の創出にもつながると思う。さらに、持ち運び型のものは、既出のように、被災地や難民キャンプの支援物資として役立つと考える。
私が国連職員なら、国と国とがお互いに理解し支え合える関係を築く架け橋となりたい。世界中の人達が幸せだと実感できるように。「もしも私が国連職員なら」
ユネスコ協会連盟会長賞
東京都 立教女学院中学校 3年 入澤里桜
中国のチベット自治区の南方にあり、「幸せの国」と呼ばれているブータン王国。そこには、鶴が来なくなったら寂しいからという理由で、電線を引くのをやめた村があると言います。
みなさんはGNHという言葉を聞いたことがありますかGNHとは、「Gross National Happiness」の略です。日本語では、国民総幸福量と訳されます。ブータンのGNHは世界第八位。GDP(国内総生産)では第一五六位と経済的には、豊かとは言えない国です。
しかし、「あなたは幸せですか?」と聞くと九七%の人が「幸せです」と答えるそうです。それはなぜでしょうか。
私は、幼い頃から毎年、新潟県の小国町に行っています。田んぼを借りている人達が、春の田植えと、秋の稲刈りに集まります。本当に何もないところです。お店もなければ、街灯もありません。夜には真っ暗になります。何もすることがないので、夜になると、みんな、自然にいろりのそばに集まります。大人達は、お酒を飲んで、楽しそうに話し始めます。子供達は工夫をして遊びを考えます。そこには普段は味わえない楽しさがあります。小国町のことを思い出すと、ブータンの人達が、なぜ、幸せと答えるのか、その理由が少しだけ、分かるような気がします。
豊かさとはなんでしょう。私は以前、アフリカのケニアに行き、そのことを考えさせられる光景を目にしました。それはサファリに行く朝のことでした。トイレ休憩も兼ねて立ち寄ったお土産物屋さんの前に、現地の人が十人ほど、集まっていました。大きな荷物を持っていたのでバスを待っていたのだと思います。半日くらいサファリに出かけ、帰ってくると、朝、そこに並んでいた人達がまだ、そこにいたのです。その人達が何をしゃべっていたのかは分かりませんが、笑いながら楽しそうにしていました。その光景は、日本の朝の通勤ラッシュを見慣れた私にとっては驚きの光景でした。みなさんは、バスを半日も待てますか。楽しそうにバスを待っている人達を見ていたら、私まで、幸せな気分になりました。
ブータンの小学校では、週に一時間、環境の授業が行われているそうです。人の幸せと環境を守ることは密接な関係にある、という考え方に基づいて行われているそうです。それとは少し違いますが、私の学校にも、土曜集会という集会が月に一度あります。様々な分野で活躍されている方のお話を聞くことができます。フィリピンでストリート・チルドレンを支援されている方や、幼い頃に戦争に巻き込まれ、孤児となりながらも、今は女優として活躍されている方のお話などです。私の学校はキリスト教の学校なのですが、お坊さんに来て頂いてお話を聞くこともあります。それらのお話を通して、私は、様々な考え方や物の見方を知ることができ、自分自身の視野が広くなったと思います。様々な考え方や物の見方があるということを知るのは、とても大切なことだと思います。
私がもし国連職員になれたら、自分とは違う物の見方や考え方があるということを、世界に広めて行く活動がしたいです。ユネスコスクールなどのネットワークを使い、土曜集会のような場を世界の小中学校に設けられるように努力したいと思います。幼い頃に世界には様々な考え方や物の見方があり、それを互いに認め合うことが大切だということを理解することが出来れば、大人になってからも違う文化や風習などを尊重できるようになれると思います。人々の心が豊かになれば、争いはなくせると思います。心の花に平和のとりでを築くことが、世界の人々の幸せにつながると信じています。
「世界の自然災害に対して国連と日本は何ができるかー自然災害から地球を守ろう」
財団法人日本国際連合協会会長賞
千葉県 渋谷教育学園幕張中学校 3年 関根峻人
「地震を避けることはできないが、それによる死は避けられなくはない」2002年に公表された国連世界防災白書の紹介文に書かれていた言葉だ。今の日本にできること、そしてしなければならないことは、今回の東日本大震災の経験を世界のあちこちで起こる災害の予防に役立てていくことだと思う。まだ復興の最中でそんな余裕は無いと思われるかもしれないが、洪水・竜巻・火山噴火など次々と自然災害は発生する。反省点・改善点あるいは成功した予防策や新たに考えられる予防策などを纏め、国内だけでなく世界に発信していくべきである。原発はもちろん大きな問題であり、世界中で取り組まなければならない課題であるが、今回得た教訓はその他にもたくさんあるはずだ。 従来、自然災害に対する国際支援は災害直後の緊急支援に偏っていて、予防段階での協力は重視されてこなかった。これに対し国連では、災害後の応急対応から事前の予防に重点を移し、自然災害による被害を軽減することを目標としている。まさに日本はこれに協力していかなければならないと思う。今までにも日本は数々の自然災害を乗り越えてきている。蓄積された経験と日本の誇る技術を他国の防災対策にも役立てることが、今回世界中から寄せられた温かい支援への恩返しに繋がるに違いない。
それでは国連ができることは何か。近年、地球温暖化や環境破壊により新たな自然災害を生み出すことが心配されている。特に開発途上国で干ばつなどの自然災害が起こるとその被害は膨大で、国連ミレニアム開発目標の一つである「極度の貧困と飢餓の撲滅」達成から大きく遠ざかってしまう。国連の重要な役割は、途上国を襲う自然災害の被害をできるだけ小さくするにはどうしたらよいかを検討し、各国に必要な物資・資金・技術援助を求めることだと思う。
今回の大震災で、今まで当たり前のように使っていた水や電気のありがたさを皆が痛感した。街全体が暗く、冷蔵庫・洗濯機・トイレ・お風呂の使えない生活が日本で起こるなんて考えたことも無かった。しかし途上国の中には、電気はもちろん食糧や飲料水が無く、泥混じりの水を飲んでいる人々がいることを忘れてはならない。しかも今年の国連事務総長からの現状報告にもあったように、最貧層の子供達の状況改善が最も遅れてしまっている。泣く力すらない赤ちゃん、骨が浮き出るほど痩せ細った子供達。そして衛生状態の悪さがもたらす感染症の流行。そのような悲惨な状況の一因が環境破壊にあるとしたら、先進国の担う責任はとても重い。気候変動による自然災害を防ぐ。この地球規模の大きな問題に世界の中心となって取り組んでいくことが、世界の自然災害に対してできる国連の最も重要な役割だと思う。
最後に僕達中学生にできることは何か。僕は、幅広い知識を身に付けること、国際交流ボランティアの三つを挙げたい。世界の色々な問題を解決するには幅広い知識が必要だ。また国際交流によって他の国々への理解を深めることも欠かせない。そして特にボランティアは重要だと思う。震災後とても多くの人がボランティア活動に参加している。僕も液状化による泥の片付けを手伝ったが、受付には大勢の人が集まっていて驚いた。これを機に日本でもボランティア活動が広まって欲しいと思う。きっとその気持ちが環境保護や世界の人々への援助に繋がると思うからだ。自然災害から地球を守るために、それぞれの立場でできることから始めよう。