第64回 国際理解・国際協力のための高校生の主張コンクール

- 第64回(平成29年度) 入賞者発表 -

受賞者/演題
外務大臣賞 宮城県仙台第二高等学校 西野 麗華さん
持続可能な開発のために,日本において取り組むべきこと
法務大臣賞 長崎県立波佐美高等学校 太田 玲亜さん
より人権が守られる世界の実現のために,国連は何をすべきか
- ユネスコが行う教育支援の必要性 -
文部科学大臣賞 静岡サレジオ高等学校 根上 葵さん
より人権が守られる世界の実現のために,国連は何をすべきか
- 世界中の子供たちの笑顔のために -
公益財団法人
日本国際連合協会会長賞
済美平成中等教育学校 松友 杏樹さん
今日の世界において多国間主義はなぜ重要か。また国連の役割
全国人権擁護委員連合会
会長賞
渋谷教育学園 渋谷高等学校 上野 蘭晶さん
より人権が守られる世界の実現のために,国連は何をすべきか
- 東アフリカでの医療ボランティアの経験を通じて、私が感じ、考えたこと -
公益社団法人
日本ユネスコ協会連盟会長賞
福島県立会津農林高等学校 古川 優生さん
持続可能な開発のために,日本において取り組むべきこと
日本ユネスコ
国内委員会会長賞
富山国際大学付属高等学校 毛利 真尋さん
持続可能な開発のために,日本において取り組むべきこと
- 世界の子供たちを笑顔に -
公益財団法人
安達峰一郎記念財団賞
沖縄県立開邦高等学校 城間 亮太さん
より人権が守られる世界の実現のために,国連は何をすべきか
- 与えられる人権に目を向けて -
日本放送協会会長賞 和歌山県立星林高等学校 菅田 利佳さん
より人権が守られる世界の実現のために,国連は何をすべきか
国際連合広報センター賞 宮崎第一高等学校 大原 葵さん
より人権が守られる世界の実現のために,国連は何をすべきか

入賞作品紹介

持続可能な開発のために、日本において取り組むべきこと

外務大臣賞
宮城県仙台第二高等学校 1年 西野 麗華

私は8月に、学校行事である「東京都内企業訪問」に参加しました。自ら訪問先を開拓するもので、国際政治や国際協力に関心がある私は、国連広報センターを選びました。そこでは、持続可能な開発や開発目標についての説明を受けましたが、その中で最も心に残ったのが、貧困と飢餓についてでした。驚くことに、世界の9人に1人は飢餓状態にあるというのです。

そこで思い出したのが、小学校3年次の東日本大震災です。パン1個を分け合う避難所での生活で、私たちが日頃どんなに恵まれているか、支えてくれる人の温かい気持ちがどれほどうれしいか、を学びました。しかし、時間が経つにつれ、それが薄れていました。

世界の現実を知り、震災時のあの気持ちを思い出し、私にも何かできることがあるのではないかと考えるようになりました。例えば貧困問題は、先進国である日本にとっても、もはや他人事ではありません。日本の貧困は「相対的貧困」に分類されますが、子どもの7人に1人が該当すると言われています。国や地方自治体は、そんな子どもたちを救うためにすでに様々な取り組みを行っており、それに加えて民間の活動も活発化しています。

調べていくと、私の自宅近くにあの「子ども食堂」があることがわかりました。「高校生の私でも役に立てるのでは。」そう考え、実際に訪問して活動に参加させてもらうことにしました。当日は、3才の子どもから小・中学生、お年寄りも含めて私も一緒に食事をいただき、その後ボランティアの大学生とともに子どもたちの話を聞いたり、相談にのったり、新学期の目標を発表しあったりしました。高校生や大学生との交流は、子どもたちの心の育成につながる、と大変喜んでいただけました。その運営の方によると、要保護児童や生活保護受給者、そして貧困に関する相談が増加していることなどを市のセミナーで知り、民生委員や食に関わっている経験から、この悲しい現実をほっておけなかったそうです。寄付や助成金のもと、無料の食事を提供しながら、悩み相談も行って心のケアにも努めています。併せて、食品廃棄の問題にも強い危機感を抱いておられました。日本は年間の食品廃棄量が世界トップクラスです。しかし、企業からと家庭から出る量はほぼ同じなので、毎日の私たちの意識次第で半減できるのです。その取り組みの一環として、この子ども食堂では野菜の皮や茎も捨てることなくおいしく調理する方法を教えています。これは責任ある消費というグローバル目標の一つにも強く結びついています。貧困問題に限らず、相手に寄り添うことだけでは解決になりません。教育も大事な解決策の一つだと気づかされました。また、私達若者には、食など生活の基本を身につけてほしいとも言われました。たとえ一流企業に入っても、この基本がないと心身を壊して失業することさえあります。それは、貧困の始まりとなり、子どもにも連鎖する可能性があるのです。しっかりと自立できる社会人になってほしいという言葉に重みを感じました。これを機に、私自身も継続してこの活動をサポートしていくことを決意しています。

貧困と飢餓だけでなく、持続可能な開発目標は相互関係にあります。それを理解した上で、課題解決には国や地域、個人が、それぞれ自らの務めを果たすことが大事だと考えます。国としては、例えば食品廃棄量の削減は日本の使命です。貧困とそれに伴う食の問題解決と、廃棄量を減らす工夫は、必ずリンクするはずです。責任を明確にするためにも、行動の達成具合を数値化し、成果を世界に示すことは、日本の大きな役割だと思います。個人としては、貧困や飢餓の子どもたちのために、寄付や募金も考える価値があります。それを示すのが、ある世界寄付指数ランキングです。日本は140ヶ国中117位でした。私たちは自分に何ができるのかを考え、立ち上がり、行動しなければなりません。一人ひとりの意識が大きなうねりとなる。それが、日本が世界や次世代へ貢献することにつながっていくのではないでしょうか。

より人権が守られる世界の実現のために、国連は何をすべきか
- ユネスコが行う教育支援の必要性 -

法務大臣賞
長崎県立波佐見高等学校 2年 太田 玲亜

私たち高校生が産声をあげた17年前、世界は戦争の20世紀に別れを告げました。そして、次の21世紀が、平和で幸せな生活を送れるよう希望を抱きました。夢と理想を語り合える、それはそれは楽しいひとときだったそうです。

ところが今、世界は平和になるどころか悪くなるばかりです。毎日のように、どこかでテロが起きています。幸せに暮らしていた人々が、いきなり命を奪われるのです。犠牲者の中には、女性、子供、お年寄りもたくさんいます。

私はテロのニュースを見るたびに、言いようのない悲しみを覚えます。ただ、このテロリストたちの多くが、子供の頃、貧しくて学校にも通っていなかったという生い立ちを知ると、胸が張り裂けそうです。なぜなら、私には思い当たることがあるからです。

私は昨年、NPOが主催する世界最大級の小中学生ロボット競技会の世界大会に、日本代表チームの一員として参加しました。世界八十か国が参加したこの大会では毎年、地球が抱えている問題の一つをテーマにします。そして、それに関するミッションをクリアする自律型ロボット競技と、その地球的課題に対して問題点を見つけ、解決策を提案するプロジェクトに何ヶ月にも渡ってチームで取り組みます。

私は小学4年生から3年間、フィリピンのミンダナオにある、ゼネラルサントスという町に住んでいました。そして、地元の学校に通いながら、子供心に気がついたのです。ミンダナオの人の暮らしが日本と比べてどれほど貧しいかということに。たとえば、水道、電気などのライフラインがなくて、夜はロウソクだけの家がありました。それから、貧しくて小学校に始めから行けない子供がたくさんいました。その子供たちは、読み書きの訓練もせずに、社会に出ていかなければならないのです。大人をまねして、タバコを吸う子供がいました。ギャングの手先となって暴れ回る子供がいました。安い賃金で働き、病気になる子供がいました。どの子の目にも希望がなく、悲しみで一杯でした。それは全て貧しさのせいでした。

「貧すれば鈍する」という言葉があります。貧しくなると、多くの人はその日を暮らすのが精一杯で、次第に人への思いやりをなくしていくという意味です。実際、フィリピンで普通に暮らしていた私も、貧しい家の子供たちから、ねたみの目で見られたことがあります。貧しさはそうでない人へのねたみを生み出します。ねたみは憎しみに変わります。そう、まさに貧しさは憎しみにつながるのです。今、世界でテロを起こしている人たちはそんな子供時代を過ごしたのではないでしょうか。

貧しさと憎しみのつながりを絶つ正しい方法は一つしかありません。それは教育をきちんと受けることです。そして、国連には、ユネスコがあります。ユネスコ憲章の一部を引用します。「ユネスコは、一般に共有する価値観を尊重することに基づき、持続可能な開発、平和の文化、人権の遵守、貧困の削減を目指す」とあります。このように世界中で、教育支援を行っているのがユネスコです。とりわけ日本ユネスコ協会は、世界寺子屋運動といって、子供だけでなく読み書きできない大人への支援も行っています。実は私たちもそれに参加できます。募金もそうですが、書き損じはがきを送って下さい。それは1枚45円のお金となり、学校の建設や運営に充てられるのです。この運動のおかげで多くの人々が、貧しさから逃れる方法を見つけ出しました。人の命も自分の命もかけがえのないものだと気づきました。だから、テロの暴力がはびこる今だからこそ、私たち一人ひとりが、ユネスコの活動に理解を深め、積極的にそれに関わるようになるべきなのです。

私の第2の故郷、フィリピンのミンダナオは、今、テロリストの活動場所になりかけているそうです。もしかして、テロのグループに、貧しさに絶望した、あの悲しい目の子供たちが加わっているかもしれないと思うと、不安でしかたありません。皆さんにお願いします。彼らを救うためにもユネスコの役割を理解し、応援して下さい。それが、21世紀が平和になる最初の一歩だと思います。

より人権が守られる世界の実現のために、国連は何をすべきか
- 世界中の子供たちの笑顔のために -

文部科学大臣賞
静岡サレジオ高等学校 2年 根上 葵

屈託のない笑顔。心の底から笑うとはこういうことだと教えてくれた笑顔。そんな笑顔を見たのは、昨年参加したフィリピン・ボランティア研修です。ある日、ネグロス島の人々を招き、ミッションキャンプを行いました。そこでは私達が準備した歌やダンス、遊びを楽しみ、無料で散髪をしたり、医者に診てもらったりします。当日の朝、3000人以上が集まったのを見て、この日を待ちわびていてくれたのだと、嬉しさが込み上げてきました。人々はこの日のために精一杯のおしゃれをしてやって来るのだそうです。しかし、中にはお菓子の包装紙で服を装飾していた子や、寄付されたものであろう、日本のキャラクターが描かれた服を着ている子がいました。貧困イコールかわいそうとは思いません。むしろ子供達にとってはその生活が当たり前なのでしょう。しかし、その姿は私達がいかに恵まれているかを分からせてくれる一つのきっかけとなりました。 貧困について考えていると、「貧困の連鎖」という言葉をよく耳にします。私が出会った子供達も、きっとこのままでは連鎖にのまれてしまうのではないでしょうか。連鎖を断ち切るには教育が不可欠ですが、子供達のほとんどが家の手伝いなどに追われ、教育を受けていないからです。

One child,one teacher,one pen and one book can change the world. Education is the only solution. Education first.

こう語った、パキスタン出身の少女、マララ・ユスフザイ。この主張からも、世界各地で同じ状況があることが分かります。子供の権利条約には、子供達は教育を受ける権利があると保証されています。権利は守られなければなりません。

私は研修での経験を心に刻み、日本でも何かできることはないかと思い、「しゅくだいひろば」の活動に参加しています。皆さんは、現在、公立学校で4万人以上の子供達が日本語指導を必要としていることをご存じですか。日本語が分からないので勉強についていくのが難しい子供もいます。そこで、「しゅくだいひろば」では主にフィリピンやブラジル出身の子供達の学習支援を行っています。子供達がより勉強に積極的に取り組むようになり、未来の可能性に繋がればと願っています。

今後、国連は教育推進運動をより活性化していくべきです。ミレニアム開発目標に挙げられていた初等教育の完全普及は、改善されてはきたものの、未だ発展途上国では6100万人の子供が学校に通えておらず、達成できていません。教育の場や指導者の提供が必要ですが、中には貧困だけでなく、紛争のために治安が悪くて学校に通える状態ではないという子供達もいます。生活環境の改善も国連に課せられた使命ではないでしょうか。

日本も様々な国連機関と連携し、すべての子供達が教育を受けられるように、より貢献していくことが求められています。幼い子供はもちろん、小学校の入学年齢を過ぎてしまった若者も視野に入れ、「世界寺子屋運動」をユネスコと共にいっそう推進していくべきです。

国内では、文部科学省の様々な対策によって、日本語指導が必要な生徒への支援は75パーセントに達しています。しかし、指導者不足のために支援が受けられない子供達もいます。ですから、行政と協力しながら「しゅくだいひろば」のような地域での取り組みを活発にしていく必要があります。私たちも、一住民として主体となって活動していくことが求められるでしょう。

私は識字率を高めることが一番重要だと思います。なぜなら、安定した職業に就ける可能性が高まるからです。自分の思いを表現できたら、貧困層の現状を知ってもらうきっかけにもなるでしょう。彼らだからこそ描ける解決策を世界に発信できるのではないでしょうか。

全ての子供が安心して教育を受けることができ、笑顔で過ごせるような日々が来ることを願い、私自身の活動をこれからも継続して行っていきます。

今日の世界において多国間主義はなぜ重要か。また国連の役割。

公益財団法人日本国際連合協会会長賞
愛媛県済美平成中等教育学校 6年 松友 杏樹

2015年11月、フランスのパリ市街と郊外の商業施設で、イスラム国の戦闘員とみられるグループによって同時多発テロが起きました。130人が亡くなり、300人以上が負傷しました。私の学校では高校1年生の3月にフランスとイギリスに海外研修に行くことになっていたのですが、直前にこの事件が起きたため、私たちの学年はフランスに行くことができませんでした。その後もテロは収まらず、私が訪れたイギリスでもテロが起こりました。テロを身近な恐怖として感じた私は、どうしてテロは起こるのかと考えるようになりました。

テロの解決策を考える上で、初めに思い浮かんだのは多国間主義です。多国間主義とは、国同士で争いが起こった時、ほかの国も協力してその争いを解決することです。しかし、今日の世界では、イギリスがEUを離脱したり、アメリカのトランプ大統領がアメリカンファーストをモットーにした政治を行ったりと、自国中心の動きが目立ちます。自分の国の利益を考えるのは当然だとしても、どこまでも自分の国だけで、ほかの国々のことを考えなくて本当に良いのでしょうか。

「自分の国だけが平和であればそれでいい」という考えをそれぞれの国が持ち始めたら、テロは悪循環に陥るのではないでしょうか。

そんな疑問を胸に抱きながら、世界というスケールの大きさに距離を感じていた時、私は放送部の活動をする中で、ある女性と出会いました。国連平和の鐘を守る会会長の高瀬聖子さんです。きっかけは、「コインでつなぐ平和の鐘」という絵本でした。「平和の鐘」について興味を持った私は、高瀬さんに何度も取材し、平和の鐘を守る会の会議にも出席させてもらいました。

平和の鐘とは、高瀬さんの亡き父である中川千代治さんが世界平和を願い、生涯を捧げて作ったものです。第二次世界大戦のビルマ戦線で多くの日本部隊が全滅する中、奇跡的に助かった千代治さん。ビルマのお寺の鐘が戦死した兵士のために鳴らされている音を聞き、意識を取り戻したのです。戦争からかえってきた千代治さんを悲しませたのは、戦争の武器にするためにお寺の鐘がなくなっていたことでした。これをきっかけに千代治さんは、戦争中携えていた軍刀と、世界中から集めたコインを溶かして、平和の鐘を作り、世界に届けました。ニューヨークの国連本部にも当時贈られた鐘があります。世界中の人と対話をし、世界中のコインを溶かして一つの平和を願ったものを作る。こうしてできた平和の鐘こそ、多国間主義の象徴ではないでしょうか。

最初に作られた平和の鐘は、千代治さんの故郷。愛媛県宇和島市の泰平寺に残されています。しかし、住職に話を聞いても、平和の鐘についてほとんど知りませんでした。宇和島市民50人にとったアンケートでも、平和の鐘について知っていたのはわずか12人で、20代以下では誰も知りませんでした。

戦争はしてはいけないと世界に訴えた立派な日本人を、地元の人でさえほとんど知らないこの状況。テロの問題が深刻化する時代だからこそ、平和の鐘に込められた千代治さんの思いを学び、世界のあり方を考え直さなくてはいけません。国同士の争いを人間関係に例えてみましょう。二人の人が喧嘩になり、中々相手の言うことを聞こうとしない時、間に誰かが入ることで仲直りできることもあります。実際私も部活で、こういった場面を経験しました。第三者の意見を聞くことで、対立していた相手の意見も一理あると思えました。自分だけが正しいと思い込んでしまっては、周りは見えなくなってしまいます。この多国間主義の重要さを訴え、警鐘を鳴らすことこそ国連の役割だと思います。

「自分の国だけが平和なのは平和ではない」千代治さんの言葉です。今こそこの考えに立ち返り、相手を非難するばかりではなく、理解しようとしてみる。同じ人間同士、自分にはない考え方も受け入れてみる。そういう視点を持った国連の果たす役割は大きいはずです。最後に、これからも国連に続けてほしいこと-毎年9月21日の世界平和デーには、平和の鐘を鳴らし続け、千代治さんの思いを引き継ぐリーダーシップを発揮してほしいです。